医療法人では社員や理事の地位を巡って厳しい対立が生じるケースがあります。 ここでいう「社員」とは従業員の意味ではなく、法人のオーナーであり、株式会社の株主に当たる地位を意味します。 株式会社では「プロキシーファイト」といって、株主側と会社側に分かれて、株主総会における議案を巡って多数派工作を行うことをプロキシーファイトが行われることがあります。味方となる他株主の説得や、相手方につく株主の切り崩しを行ったり、委任状を獲得する激しい争いになります。 医療法人でも社員や理事を巡って「医療版プロキシーファイト」といえるような紛争が起きるケースが生じます。
社員の地位や理事の地位について紛争が生じるのは、例えば以下のケースがあります。
・相続によって故理事長の子らを社員にしたが、医師ではない者が医療法人の経営方針に
反対し、社員総会の運営に困難が生じている。
・信頼をしていたコンサルタントや取引事業者のメンバーを社員や理事に入れたものの、
同社との関係性が悪化し、経営権を奪われそうになっている。
・複数の医療機関を有する医療法人において、各院長を理事に選任したが、
院長らが結託して経営者を排除しようとしている。
・M&Aによって経営権を譲渡する予定であったが、譲渡先の経営方針に
疑義が生じており、関係解消を考えている。
以上のような紛争の場合には、適法な手続を取った社員総会決議で相手方の理事を解任したり、味方となる理事を選任する方法があります。社員を退社・除名する決議を採る場合もあります。