コラム

MS法人・関連法人の再生 会社更生法の検討

会社更生法について

 

1.はじめに

会社更正法とは、経営破綻に陥った倒産企業を潰さずに再建を行う手続を定めた法律であり、株式会社だけに適応されます。

そのため、会社更生法は、株式会社ではない医療法人や個人クリニックには直接適用することはできません。

そこで、医療機関に関連する会社、いわゆるMS法人の再生の方法として説明致します。

 

医療法人の運営には、その医療機関の不動産の管理や、コンサルタント、患者の日用品の販売などで

メディカル法人(MS法人)を組み合わせることは多々あると思われます。

 

そして、医療機関において再生が必要な場面では、MS法人においても経営が困難な状況が想定されます。

また、M&Aにおいて、MS法人のみを譲渡する場合に、事前に債務超過を解消する手段の一つとなります。

医療機関においては民事再生が多く使われる手法ではありますが、関係会社やMS法人の債務超過の場合に、選択肢の一つとなるでしょう。

 

2.会社更生法とは

会社更生法は、

「窮境にある株式会社について、更正計画の策定及びその遂行に関する手続きを定めること等により、債権者、株式その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更正を図ることを目的とする」という趣旨で定められました。

 

17条に基づいて公正手続きの開始が申し立てられると、通常は、

裁判所が選任する保全管理人が会社の財産を管理し、会社の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属します。

 

3.会社更生法が適するケース

 再生型法的手続きにおいては、民事再生法が基本法と位置づけられ、比較的大きな株式会社については、会社更生法の特徴を勘案して手続きを選択することになります。

 

以下のケースが会社更正法による再生が適している場合です。

 

1.事業継続に必要な資産に多くの担保権が設定されており、担保権者との交渉が難しい

2.株主、経営陣に責任があり、100%減資や退任が必要とされる。

 

3.債権者と債務者企業が対立していて、手続きが難航することが予想される。

4.株主、経営陣など債務者企業内部で、再生方針について意見対立がある。

 

4.手続きの流れ、メリット、デメリット

 

手続の流れ

1.更生手続開始申し立て

2.保全処分申請(1と殆ど同時に行うのが普通)

3.裁判所の調査を経過したのち、保全命令及び更生手続開始決定

4.更生手続開始決定と同時に裁判所から管財人が任命

5.更生開始決定

6.各種権利の届出

7.債権調査期日日と第1回関係人集会

8.更生計画案と第2回関係人集会

9.第3回関係人集会

 

メリット

「更正担保権」の権利行使を禁止し変更することができる

 

デメリット

  • 手続が重く、民事再生に比べて時間・費用がかかる。
  • 旧経営者は経営権を失い、旧株主も通常権利を失う。

 

5.民事再生との比較

 

  会社更生法 民事再生法
対象 株式会社
(中小企業も適用可能)
すべての法人および個人
再生のスピード 遅い 早い
裁判所の関与度 高い 低い
株主責任 通常100%減資 原則として減資はしない
経営権 裁判所の選任する管財人が経営にあたる 原則として現経営者が経営を継続する
役員(理事・取締役)の地位 原則として全員辞任 原則として留任
減免の対象 更正債権(手続き開始前の原因に基づいて生じた
財産上の請求権)
更正担保権
(担保権付の請求権)
再生債権(手続き開始前の原因に基づいて生じた
財産上の請求権のうち、無担保かつ優先権のないもの)

 

 

上記のとおり、会社更生法は医療機関の再生においては直接的には適用されません。また、経営陣の辞任が原則となっているため、現在の経営陣のもとで再生を行うケースでは難しいといえます。

但し、MS法人や関係会社の債務超過が大きく、担保権が大きいケースや、M&Aなどで経営陣の交代が予定されている場合には、一つの選択肢として検討できる場合があります。

 

会社更生の適用については、経験のある弁護士に依頼することがスムーズとなります。活用をご検討の方は、当事務所にご相談ください。