コラム

医療法人の株式? 医療法人の出資持分について ②

前回の記事〔医療法人の株式?医療法人の出資持分について①〕でも紹介致しましたが、株式会社の株式に該当するものは医療法人において出資持分となります。


それでは、株式と同じように出資持分の金額が大きいほど決定権があるのでしょうか。

出資持分と株式の違いのイラスト

まず、医療法人においては、理事の選任や定款変更など、重要事項の決定をすることができる人を『社員』といいます。
従業員という意味の社員とは異なります。
社員とは、社員総会(株式会社でいう株主総会)で重要な事項(理事の選任、定款変更、退職金の支払い、借入限度額の決定)を決議する権限があります。

この社員総会においての議決権は、出資持分の金額とは関係なく、「一人一票」となります。
従って、出資持分と株式は、経済的な側面では同じですが、法人の重要事項の決定権という意味では全く異なるのです。

出資持分請求事例のイラスト

例えば、医療法人の設立者であるA理事長が亡くなった際に、出資持分500万円については、配偶者であるBが250万円、CDが125万円ずつを保有していることになります。
しかし、社員総会においてBCDの2倍の議決権をもっているわけではありません。BCDがそれぞれ社員になっているのであれば「一人一票」です。
このように医療法人における出資持分は、議決権の割合とは全くリンクしていないことに注意が必要です。

法律相談においても、「私は過半数の出資持分をもっているのだから」「院長の出資持分と併せれば3分の2を越える」という声をよく聞くことがありますが、社員としての議決権には関係がないということに注意が必要です。

この相続の例ですと、故理事長の妻Bは出資持分の半数を持ちますが、社員としての議決権は一票となります。
そして、長男Cの現理事長の議決権も一票、医療法人の経営には参加していない次男Dの議決権も一票となります。

この場合には仮にDがB・Cとは反対の議決権を行使したとしても、BとCが3分の2という過半数の議決権をもっているので、Dの議案を否決することができます。
しかし、この図よりも兄弟が多い場合や、ほかの施設の院長が社員に参加している場合などは、出資持分の金額では過半数を占めていても、社員としての議決権では負けて支配権を失ってしまう例が多くあります。

このような出資持分と社員の関係をめぐって医療法人で争いになるケースも多くあります。

当法律事務所では、社員総会や理事会の運営のアドバイス、支配権を伴う紛争について多数アドバイスの実績がございます。

お気軽にご相談ください。